ビル・マンションの水は危ない
仕事柄、全国の不動産物件、特にビルやマンション
学校や病院などの受水槽事情について3桁以上視て
きましたが、正直なところ其の内容をあからさまに
述べて良いのか否かを迷ってしまいます。
説明しても信じて頂けないだろうというのが一点と
入居者の努力だけでは改善できない部分があるというのが
その理由です。
聞き取り調査で分かったことは、水道水が各部屋へ
一戸建て住宅と同じように直結でつながっているのだろうと
考えられているか、又は全く考えたこともなかったか
いづれかのご認識の方々が多数いらっしゃられるということです。
入居数が数軒ほどの小規模物件は別として
その他大多数の集合住宅やビルには
受水槽とよばれる水タンクが設置されており
一度水道水をそこに溜めてから各部屋へ
供給する仕組みとなっています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・札幌市水道局HPより
集合住宅というくくりでいえば、1,965年(昭和40年)頃より
急加速で建設され始め、2,017年(平成29年)の国土交通省の
発表では941万戸とされています。
比較的新しい物件はそれほどでもありませんが
特に昭和に建てられた物件の場合は、そのほとんどの受水槽に
何かしらの損傷や問題を抱えているのが実態です。
物理的な問題発生の実例
・・受水槽の損傷
・・・・ひび割れや経年劣化によって汚水が染み込む。
・・・・下水管や汚水槽から原液が流れ込んでいた実例も
・・・・ありました。
・・・・これは北海道の有名な繁華街でのことで
・・・・私は5年間このビルに入所(事務所)しておりました。
・・・・事件は新聞にて報道されましたが、実際には
・・・・特に珍しいケースではありません。
・・受水槽の定期清掃が行わていない
・・・・定期清掃が行われていたとしても、鉄さび・水垢
・・・・藻類・カビ・ポンプ機器から漏れでた油の流入
・・・・埃やごみの類・マンホールから侵入したゴキブリや
・・・・ネズミの糞や死骸などは珍しい光景ではありません。
・・受水槽から高置水槽へ続くパイプの中の汚れ
・・・・専門的にはスケールといいますがこの部分については
・・・・パイプ自体が家庭で使われている管より太いため
・・・・例えパイプ内部が腐食していたとしても余程のことが
・・・・ない限り建物が在る限りそのまま使われ続けます。
・・高置水槽の汚れ
・・・・高置水槽には通気口が設置されており、密閉されている
・・・・ものではなく、検査や清掃作業のためにフタで開閉する
・・・・仕組みになっています。
・・・・つまり、何処からでも生き物や汚物が入り込める
・・・・代物なのです。
・・・・受水槽の問題発生箇所と違うのは下水管や汚水槽との
・・・・相互干渉がないことだけです。
・・・・汚物の中には、受水槽で挙げたほかにスズメやハトの
・・・・死骸や糞が加わることになります。
ここで、受水槽に関わる法律や条例を確認したいと思います。
下の図をご確認ください。
10㎥を超える受水槽は簡易専用水道に区分され、定期的な清掃や
定期的な検査が義務付けられています。
10㎥以下であっても、各自治体の規制やビル管理法の規制は
在りますが、検査実施率をご覧ください。
簡易専用水道でさえ80%の実施率であり、小規模受水槽に至っては
何と3%となっています。
ほとんどが放置と言ってもよい状態です。
いづれも、検査を受けても当局から何らかの指導を受ける確率は
約40%も有りますので、何年も放置状態の受水槽がどのような状態と
なっているかは、想像できるはずです。
これには、いくつかの要因があります。
建物の管理者、登記上の所有者、債権を所有する会社
運営する会社、入居する法人各社等々、様々な事情が
絡み合っているために、結果として不都合な事態を招くことも
要因の一つです。
もう一つは、行政の指導と実態との乖離があることも
大きな要因となっています。
結論を申しげますと、一度でも受水槽の内部を覗いたことが
ある人は、そこの水を飲む度に不快な気持ちになるのです。
有効容量 | 給水設備の 区分 |
水道法上の管理義務 | 割合 (%) |
検査実施率(%) | 指摘率 (%) |
10㎥を超える受水槽 | 簡易専用水道 | 定期的な水槽の清掃・厚生労働大臣の指定する検査機関による 定期検査の実施義務 |
20 | 80 |
40 |
10㎥以下の受水槽 |
小規模受水槽水道 |
各自治体の規制と指導の対象。 ビル管理法では清掃義務と水質検査の義務 |
80 | 3 |
40 |
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