バラード平成 〈競り市〉
古物商が集う競り市に行ってきました。
古物商の許可証は以前より持ってはいましたが、業者を対象とする
競り市への参加はその日が初めての経験でした。
此処で小生、この歳で人生観が変わるほどの衝撃を受けてしまいました。
会場は学校の体育館の半分くらいの広さがある屋内、其処に幾つもの
商品の山が築かれており、40名ほどの商売人がセリヅカと呼ばれる競
売の進行を取り仕切る人の声を中心に次々と取引きを決め
競り落とした商品に自分の番号を書いた「買い」の札を貼っていくのです。
決まりに沿って、皆一様に業者名と管理番号が書かれた名札を付けた帽子を
被っている。
ほとんどの人が野球帽です。
もちろん、小生も同様なのですが、業者名としているのは、正直なところ
未だ店舗もなければ売買実績もない架空のものです。
小生が驚いたのは取引される金額のことです。
此処で商品の具体名をあげて公表することは控えますが
新品・古物の例外なく、市場価格の100分の1から50分の1程度だと
言いあらわせば、驚きをご理解いただけるでしょうか。
モノの価値と価格の関係について考えさせられてしまいました。
例えば、女性が一生かけて揃えたであろう着物が、桐の木箱に納められたままの
状態で1分間で売り手から買い手に移っていくのです。
しかもその金額が、パートタイマーが1時間で得るであろう額と同等か
それ以下なのです。
「モノ」から観た、この女性の一生って一体なんだったんだろうかなどと
考えてしまいました。
もっともこの女性にとっては、この着物を手に入れるために
何ヶ月間も汗を流した充実感と、この着物を自分のものとした満足感で
この着物そのものを所有した意味はすでに終わっているのかもしれません。
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