バラード平成 〈恋愛〉
電車は、いつものように満員状態で身動きもままならない。
京浜東北線、上野方面へ電車は向い
東十条駅を過ぎたあたりのいことだった。
目の前の女性が傍らの女性に、明るい口調で呟いた。
「私ね、今恋愛してるの」
「ぐうぇ~ッ!!」
年の頃はどちらも20歳前後か ・ ・ ・
聞いた方は、唐突なこの言葉に返す言葉に困っている。
それには構わずに言葉を続ける。
「でも、なんかつまんないんだぁ~ ・ ・ ・
・別に彼のこと嫌いじゃないのよ ・ ・ ・
・好きか嫌いかと言えば、好きなのよ ・ ・ ・」
「 ・ ・ ・」
「でもさぁ ・ ・ ・
・彼と一緒に居ても ・ ・ ・
・なんかさぁ ・ ・ ・
・・ ・ ・ 楽しくないの ・ ・ ・」
相手の彼女は未だ無言のままに顔を見詰めている。
電車は、王子駅に着いた。
ぼくは、其処で降りたので、その後の会話の内容は分からない。
スタンダールは、恋愛に四つの型があると解いている。
情熱恋愛と趣味恋愛、それと肉体恋愛と虚栄恋愛 ・ ・ ・
私が、改札口へ向かいながら、躊躇なく
あれは肉体恋愛だろうなどと真っ先に考えてしまったのは
誓って?
中年の卑らしさ以外の何物でもありません。
コメント